田舎図鑑
山梨市
山梨県山梨市
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甲府盆地は、言うまでもなくぶどう、ももなどの果樹栽培が有名で、行ってみると至る所が果樹畑となっています。通常、田舎といえば田んぼの風景を思い出しますが、ここはそれとはまったく違った風景です。そして、背後には北も南も、山々がそびえ立っていて、それらにいつも見守られているような安心感があります。山梨市にある空き家の持ち主に会いに行く機会があり、訪ねてみると、立派な家というほどではなかったものの、こじんまりときれいにしてあり、特に目を見張ったのが、クラシックのレコード収集と大きなスピーカーを備えたオーディオセットでした。窓の向こうには果樹園が広がり、ここでブラームスでも大音量で聴いてみたいと思いました。
地元の人がよく行くようなお店でお昼を食べると、この土地の大地の恵みを感じます。県名を冠した市であるが、県庁所在地でなく、人口もかなり減って3万人くらいの小さな町です。それでも豊かさを感じます。東武鉄道を興して「鉄道王」と呼ばれた根津嘉一郎の出身地で、市内に根津記念館という旧家と美しい庭園が残されていて、かつては甲州財閥と呼ばれ、明治から大正にかけて中央財界に大きな影響力を与えたものです。その過去を思うと、今のひっそりとしたこの地域のようすが拍子抜けのように思えます。すり鉢のような形をした地形であるため、少し斜面を上ると、どこからでも盆地全体の夜景を眺めることもできます。そこから生まれる一体感も、この土地の心地よさになっていると思います。







